日本超音波医学会 第15回関西地方会 シンポジウム

「Intervention Ultrasound -ビデオで見せます,教えます,コツと実際-」


第1会場 15:15〜16:55

座長 伊藤 秀一(和歌山県立医科大学第2内科)
   田内  潤(大阪労災病院循環器内科)


1)肝細胞癌に対する超音波誘導下での穿刺局所療法
大崎往夫、木村 達
大阪赤十字病院 内科

肝細胞癌の治療法は手術、経カテーテル治療、穿刺局所療法に大別されるが、多く の場合、各治療法の利点をいかし組み合わせて集学的に行われる。従来はその適応の 広さから動脈塞栓療法がこの集学的治療体系の主役を勤めてきたが、今日では穿刺に よる局所療法(エタノールなどの局注、マイクロウェーブ凝固)が中心となってきて いる。なぜなら初期の高分化なものでは切除に匹敵する根治性をもち、また動脈塞栓 療法による壊死を免れた残存部にも併用でき、切除後の再発にも有用であり、侵襲度 も低く繰り返して行うことができるからである。
超音波誘導下穿刺による局所療法のポイントはまず安全で確実な穿刺ルートの確保 にある。無理のない呼吸停止下に腫瘍を描出し、肺や胆嚢などの他臓器あるいは肝内 の太い血管を避け、さらに刺入後の偏移も考慮して穿刺ラインを設定する。このため 我々はコンベックス型プローベに切り込みを入れ穿刺針のルートを刺入部から観察で きるようにした穿刺専用のプローベを試作し使用している。局注療法においては腫瘍 の境界部を重点に(surgical marginの確保)、さらに注入液を腫瘍全体に行きわた らせるようにする。そのため必要に応じて複数の穿刺注入針を用いる。マイクロウェ ーブ療法においては凝固の開始と同時にガスのため観察ができなくなるため、事前に 複数の誘導針を刺入するなどして凝固部位をあらかじめ決めておくことが必要である 。随時造影CTによる効果判定を行い必要に応じて治療を追加する。
穿刺局所療法は比較的侵襲度の低い治療法ではあるが、より根治性を求めて治療を 強めるならば合併症や侵襲性も強くなる。予後決定因子を考慮しながら、両者のバラ ンスをとることが同療法の最大のポイントと言える。


2)肝細胞癌に対する熱湯局注療法 (percutaneous hot saline injection therapy:PHoT ピーホット)
本田伸行1)、横井 浩2)、穴井 洋3)、 大石 元3)、打田日出夫3)
1)済生会御所病院 放射線科、2)日生病院 超音波、 3)奈良医大 放射線科・腫瘍放射線科

肝腫瘍の局所治療法としての熱湯局注療法(Percutaneous Hot Saline Injection T herapy;PHoT、ピーホット)は経皮経肝的に肝癌を穿刺して沸騰させた生理的食塩水 (熱湯)を局注するだけの簡便な治療法であるが、熱湯の拡散範囲は確実に熱凝固壊 死に陥り、エタノール局注療法(PEIT)よりも少ない治療回数で確実な腫瘍壊死効果 が得られる。
本シンポでは最近PHoTを施行した肝細胞癌2症例をVTRに収録したので、実際の 手法ならびに効果判定の画像を供覧する。
【手技】前投薬として硫酸アトロピン0.5mg、ペンタジン15〜30mgの筋注を行い、穿 刺部から腹膜まで1%キシロカインで局所麻酔を行った後、USガイド下で腫瘍を穿 刺する。穿刺後はコッヘルで穿刺針をはさんで固定し、直接注射器を接続して少量の 造影剤を混合した可及的高温の熱湯を緩徐に腫瘍内に局注する。通常、熱湯の局注量 が10ml近くになると疼痛を訴えるようになり、この疼痛が強くなった時点で局注を中 断してCTで熱湯の拡散範囲を確認する。その後さらに、必要に応じて針先の位置を 修正して熱湯の追加局注を行う。
【症例1】81歳、男性。C型肝硬変。S5に20mmの腫瘍を指摘され、針生検で高分化 型肝細胞癌と確診されたため熱湯24mlを局注した。わずか1回のPHoTで根治的な腫瘍 壊死効果が得られ、現在経過観察中である。
【症例2】44歳、男性。C型肝炎。S8に径25mmのモザイクパターンを示す肝細胞癌 がみられ、2日の間隔でPHoTを2回、総量40mlの熱湯を腫瘍内に局注した。治療後の CTでは腫瘍部は壊死を反映した低濃度化がみられ、ほぼ根治的な治療ができている ものと考えられた。しかしながら、壊死部は周辺非癌部を十分に含んでいないため、 辺縁部での腫瘍残存の可能性を念頭において経過観察中である。


3)CO2動注US angiography下PEIの有用性
小畑達郎1)、岡山昌弘1)、宮田 央2)、 田中憲明3)、大野研而1)、大野浩司4)
1)京都民医連中央病院内科、2)綾部協立病院内科、 3) 京都民医連第2中央病院内科、4)京都府立医大放射線科

我々はviableな部分が通常のUSで不明瞭な肝細胞癌例に対し、 積極的にCO2動注USangiography下PEIを施行し、良好な成績を得ている。 対象は1996年1月より1997年11月までに当院でUSangiography下PEIを施行した 肝細胞癌22例、同時期に通常のPEIを施行した22例を対象とした。 方法は、CO2をヘパリン加自家血と混合し、 固有肝動脈より動注し非癌部のCO2stainが消失する時点で 全肝をスキャンし、濃染部にPEITneedle数本を穿刺し、 純エタノールを注入した。
結果:両郡間に無再発率、生存率に差を認めなかった。 USangiography下PEIの実際を供覧し、症例を提示しつつ報告する。


4)超音波内視鏡手技の実際
梶山 徹
関西電力病院第一内科

近年、消化器内視鏡の分野では、外科手術に比し低侵襲である内視鏡的治療の臨床 応用が盛んである。たとえば消化管粘膜内癌の治療手技として、内視的粘膜切除術( EMR)が広く行われており、食道静脈瘤に対しては、従来の内視鏡的硬化術よりも 安全性の高い内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が普及してきている。超音波内視鏡(EUS) は、それらの治療適応の決定に有用であり、癌深達度診断やリンパ節転移診 断、食道周囲の側副血行路の評価や壁内貫通血管の同定などに必須の検査法となって いる。また内視鏡鉗子口より挿入可能で、直視下に病変部を走査できる細径超音波プ ローブを用いれば、内視鏡治療の術中に腔内超音波検査を施行し得る。これによりEMR では、粘膜下層への局注による病変部と固有筋層の剥離を超音波断層像で確認す ることが可能となり、最も重篤な合併症である消化管穿孔の発生が予防できる。EVL では、結紮後の食道壁内の血流状況が確認可能で、追加治療の必要性を判定できる。
通常のEUSはラジアル走査型が主流であるが、最近、穿刺針の刺入方向に沿った 走査の可能なリニア型の穿刺用超音波内視鏡が開発され臨床応用されはじめたため、 その使用経験もあわせて紹介する。


5)急性心筋梗塞における冠血流速計測
川元隆弘、吉田 清、赤阪隆史、穂積健之、 高木 力、加地修一郎、上田佳昭、盛岡茂文
神戸市立中央市民病院循環器センター内科

【目的】急性心筋梗塞での冠血流速計測の有用性の検討。
【方法】対象は初回前壁梗塞で6時間以内にPTCAを施行した28例。 PTCA前(狭窄例)後(非狭窄例)にTIMI-2 flowの14例の血流速パターンの比較。 PTCA成功後の血流速パターンと最大CPK、慢性期左室壁運動スコア(WMSI)との比較。
【結果】(1)狭窄例は非狭窄例に比し収縮期流速が大、拡張期流速が小、収縮期逆流波 を認めず、TIMI-2 flowの原因が狭窄か微小循環障害か識別できた。(2)収縮期流速、 拡張期波減衰速度とWMSIとの間に有意な相関(r=-0.50,r=-0.55)を認め、最大 CPKとの間にも有意な相関を認めた。
【総括】冠血流速分析から冠インターベンション追加の可否および予後を判断できる。


6)超音波穿刺術による腎および前立腺生検の実際
斎藤雅人
明治鍼灸大学泌尿器科学教室

泌尿器科領域におけるInterventional Ultrasoundには、多くの技術がある。 そのなかで最も普及しているのが、腎生検と前立腺生検ではないかと思われる。とく に腎生検は泌尿器科だけではなく、内科や小児科でも行われる腎疾患の重要な診断法 である。そこで本シンポジウムでは、この両者について、技術的な詳細ならびに安全 性について報告する。
超音波穿刺術を用いると、腎のどの部位でも狙ったところを正確に生検できるので 、私たちは超音波穿刺術による腎生検をとくに選択的腎生検とよんでいる。安全性に ついて検討してみると、京都府立医科大学泌尿器科学教室において、1978年より1997 年までの20年間で755例の選択的腎生検を行い、合併症としては、輸血4例(0.5%) でうち開腹術により止血したものが1例あった。また腎機能低下が1例(0.1%)に みられた。
1988年までは14 G Tru-cut針による用手的な生検であったが、1989年からは、バイ オプティガン(自動生検装置)に18 G臓器生検針を取付けた方法で行うようにした。 その異なる方法別に合併症を検討すると、合併症を起こしたのはいずれも旧方法であ り(538例中5例で0.9%)、新方法では全く合併症はなかった。(217例中0例) とくに腎腫瘍を生検する方法は選択的腎腫瘍生検とよんでいる。1982年から1997年ま で152例経験し、合併症はなく、血管筋脂肪肉腫という特殊な1例のみ腫瘍播種がみ られた。
前立腺生検は、経会陰的アプローチと経直腸的アプローチがありそれぞれ一長一短 がある。前立腺生検も1989年より、バイオプディガン(自動生検装置)に18 G臓器生 検針を取付けた方法で行っており、合併症はない。 これらの手技の実際をビデオとスライドで、供覧する。


7)胎児治療と超音波
村上典正
国立循環器病センター周産期治療科

約25年前に初めて子宮内胎児への直接的治療操作が行われ、それまで致命的と考え られていた疾患を持つ胎児もまた治療の対象となりうることが確認された。それ以後 様々な胎児疾患に対し体内治療が試みられてきた。その過程で超音波断層装置のはた した役割は非常に大きい。特に近年の超音波断層装置の発達は、より正確な胎児の病 態評価と、より正確な子宮内治療操作を可能とした。現在かならずしもすべての胎児 病が体内治療の適応となるわけではないが、閉塞性尿路疾患や胎児胸・腹水症などに 対する超音波ガイド下でのシャント手術は世界的にも広く行われており、その有効性 も確認されている。今後も超音波断層装置を含めた医療機器の発達に伴い、胎児治療 の適応はますます多くなると考えられる。今回は胎児診断のための超音波ガイド下で の胎児採血や胎児コントラストエコー法、そして胎児治療として閉塞性尿路疾患や胎 児胸・腹水症に対する超音波ガイド下の穿刺・シャント手術などをビデオにて提示し 、胎児治療の現状と未来について考えたい。


特別発言
大石 元
奈良県立医科大学腫瘍放射線科